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研究室について

研究テーマ | 研究プロジェクト

研究テーマ

 私たちのゼミでは、広い意味での「社会的認知」を研究の中心テーマとしています。社会的認知というのは社会心理学の中の一領域で、人間がどのようにして、周囲の人々や所属集団、自分の住んでいる世界などについて意味を見出し、理解を形成しているのかを明らかにすることを主な目的としています。人は社会のできごとや他の人々に関する情報について分類(カテゴリー化)を行ない、記憶し、推論を働かせ、判断を行なうなど、さまざまな情報処理を行っていますが、そうした認知過程の仕組みを明らかにしようというのです。人間が、他の人々について、ともすると誤った考えや信念を持つことがある原因はどこにあるのか、また何が正しく善であるのかをどのようにして判断しているのかを明らかにすることによって、幸福で公正な社会を実現するために必要な、他者や世界に関する理解を育てることに貢献することを目指しています。
 現在、私たちが特に力を入れて研究している具体的なテーマについて、以下に詳しく説明しましょう。

社会集団と認知

 人間はさまざまな社会集団や組織に属して日々の生活を送っています。所属する集団から得られるアイデンティティーは、私自身が生きる意味すら与えてくれることがあります。また、他の人々をさまざまな種類に分類しグループ分けすることによって、複雑化・多様化する世界を意味あるものとして理解しています。ただし、人々が異なる集団に分かれ、「うち」と「そと」の区別ができると、そこにはしばしば、偏見やステレオタイプ、そして「身びいき」などの不公正が起こります。それが対立や紛争の原因になることも珍しくありません。性別、人種、職業、国籍などに基づく社会的カテゴリーや、集団の間に葛藤を引き起こす、認知的・感情的過程について実証的研究を行っています。

正しいこと・善いこと・悪いことの認知

 たとえ深く考えなくても、あれは正しい、これは間違っていると、私たちに「わかる」ことがたくさんあるのは、なぜでしょう?また、ルール違反を見つけると、それを罰したくなるのはなぜでしょう?そうかと思えば、善い・悪いに関する私たちの直観が、時として法や正義の論理と食い違うことがあるのはなぜでしょう?そして、置かれた立場や文化的背景が違う集団の間では、道徳の基準すら異なる場合があるのはなぜでしょう?「責任」「意図」「権利」「善悪」などについて、法や思想の世界と、私たち人間の理解との間の、何が異なり何が共通しているのかを、実験や調査をもとに調べています。
「新学術流域研究」法と人間科学(外部サイト)


認知の共有とコミュニケーション、そして文化

 社会的認知を成立させる心理過程は、たった一人の心の中で起こるものだけとは限りません。個人レベルの情報処理過程において完結するのではなく、むしろ多くの人々と共有された認知的活動という性質を持っているのです。「文化」もまた、社会的に共有された認知が、大規模に、また時間の軸を超えて継承されたものと考えることができるかもしれません。そして、認知の共有と再生産には、コミュニケーションが重要な働きをしていて、言語の役割などは、その中でも最も注目に値するものです。言語は、私たちの認知の内容を表現するだけでなく、認知そのものを方向づける作用ももつからです。私たちのゼミでは、コミュニケーションを介したアイデンティティーの形成や偏見の伝搬、道徳判断の文化的基盤、文化的価値観や言語の使用と法意識の相互関係などについて研究を行っています。その中には、海外との国際共同研究も多数含まれます。

研究プロジェクト

・平成27〜30年度 科学研究費 (基盤研究(B):研究代表者:唐沢 穣)
「道徳意識の生成・共有・創発過程:個人と文化の動態的関係の解明」

・平成27〜28年度 吉田秀雄記念事業財団 助成研究
「消費者の価値観とアイデンティティーがもたらす影響
〜その心理的基礎過程とコミュニケーション機能の解明〜」

・平成23〜27年度 科学研究費(新学術領域研究)「法と人間科学」
研究班(研究代表者・唐沢 穣):
「責任概念の素朴理解と非難を規定する心理過程の解明と法的概念の教育方法の考案

「新学術流域研究」法と人間科学(外部サイト)

・平成23〜25年度 科学研究費(挑戦的萌芽研究;研究代表者・唐沢 穣)
「『人を罰する動機』の規定要因と影響に関する法心理学的研究」

・平成23〜25年度 科学研究費(基盤研究(B);研究代表者・唐沢 穣)
「良好な対人関係を築くコミュニケーション方法の考案:言語心理学モデルの構築と応用」

・平成22〜23年度 日本学術振興会 二国間共同研究・セミナー(オーストラリア)
(研究代表者:唐沢 穣 共同研究者:Yoshihisa Kashima & Nick Haslam メルボルン大学) 「偏見の基礎にある文化の動態性に関する心理学的研究」